05. 本作の世界で前作「君の名は。」の二人は結婚出来たのか?

新海監督は「君の名は。」も「天気の子」もラブストーリーのつもりがなく、人生で初めて憧れの「他者」に出会った思春期の少年の一途な気持ちを描いたのだと複数のインタビュー記事で回答しています。どうやら監督は、主人公達が「結婚」というゴールに到達するかどうかに興味が無さそうです。このためか、監督はこの手の質問については「ファンの皆さんのご想像におまかせします」とはぐらかした回答をすることが多いです。

ところで、「天気の子」を「君の名は。の世界の形が決定的に変えられてしまう」物語だと捉える見方も可能です。わざわざ瀧と三葉が「天気の子」の作中に登場するわけですが、これはサービスカットというだけでなく、2021年夏までは「君の名は。」と同じ時間軸に有ることを示すためだとも考えることも出来ます。作品の途中で「世界の形が決定的に変わってしまう」ことにより2022年4月に瀧と三葉が四谷での再会を果たせないパラレルワールドに突入します。最後の帆高と陽菜の再会シーンは、「君の名は。」のラストに似せていますが、一方で「君の名は。」のラストの不成立を前提にしか成立しえません。もしかすると、監督が「君の名は。」の「恋人を救うと世界も救える一石二鳥の結末」に納得しないファンに向けて、「上書き」の結末を用意したのではないかという解釈も進められるのです。

しかし、一方で新海監督は舞台挨拶で「『天気の子』の世界で『君の名は。』の二人は結婚出来たのか?」という質問を受けて「基本的にはファンの皆さんのご想像におまかせします。ただ、私としては、まぁ結婚しているように思っています。えっ?前作では再会は晴れの日だったって? うーんそれは、瀧と三葉の二人には雨の日も晴れているかのように感じていたからなのかもしれません。」というファンサービス回答をしていた模様です。

ちなみに、立花冨美のアパートに帆高が訪問したシーンにおいて、小説版では「孫の結婚写真」が飾られているとの記述があります。帆高が認識している冨美の孫は瀧のみであるため、瀧が2024年までに結婚したと考えることが出来ます。そして映画版の同シーンでは、冨美の右手首に組紐のブレスレットが着用されており、宮水家由来の可能性も考えられます。この小説版&映画版の両者の情報を総合することで、瀧と三葉は見事結婚したと想像することが可能なのです。なお、組紐のブレスレットが宮水家由来である可能性は監督自身が劇場版パンフレット第二弾にて自ら示唆しています。

ともかく、監督は「ファンの皆さんのご想像におまかせします」と仰ってくれているので、我々は1番こう有って欲しい物語を各々想像すればいいということになります。

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