06. 本作は男性に比べて女性のウケが悪いと言われるが、本当か?

男女別のレビュー評価などを見ていると実際に、男性に比べて女性の受けは悪いようです。その理由については私は、陽菜の感情移入性の低さが原因となっていると考えます。

陽菜は「秒速5センチメートル」の「第二章コスモナウト」における(澄田花苗にとっての)遠野貴樹みたいな存在です。生身の人間というより一種の偶像にも感じられます。「秒速5センチメートル」がもし、第二章しかなかったら男性にはあまり面白くない話に感じられなかったのではないでしょうか。

陽菜役の森七菜が一番好きな新海作品として「言の葉の庭」を挙げ、帆高役の醍醐虎汰朗が「君の名は。」を挙げているのはある意味、想定通りな気がして面白いです。女性にとっては雪野百香里は感情移入しやすく、宮水三葉はしにくいでしょう。三葉は陽菜ほど露骨ではありませんが、偶像っぽい存在なのです。

ところで、エキサイトレビューにて、たまごまごさんという方が以下のようなことを書かれていました。
https://www.excite.co.jp/news/article/E1566059026521/
――引用開始――――――――
札幌の「天気の子」舞台挨拶で陽菜役の森七菜が、新海誠監督から「リアルな演技をしようとしたら「もっとかわいく」と監督からいつも指示がでた」という旨のエピソードを語っていた。それを聞いた新海誠監督はすかさず「アニメの女の子はかわいいほうがいいからね」と返した。
――――――――引用終了――

監督は、女性客への受けを狙っていないのかなと感じられるエピソードですね。なお、本作に限らず、新海監督は個人差こそあれど、女性より男性、年齢が高い人より低い人に人気が有る傾向です。これは、監督の作品に漂うロマンチシズムに由来するものと思われます。低年齢ほど、また、男性ほどロマンチストが多いというのが統計的に言えるからです。

ところで、新海監督は、ただのロマンチストというだけでなく、運命の男女が結ばれて終わるシンプルなハッピーエンドをあまり好まないのも特徴です。新海監督は「運命の異性」というテーマが好きなものの、これに対して非現実性も同時に表現したい心情がはやるからなのかもしれません。そして、監督は主人公たちが結ばれなくてもバッドエンドではないと主張します。そのことについては、「02.本編ストーリー後、帆高と陽菜二人は結ばれたのか?」で紹介したインタビュー記事のとおりです。

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